新町名「代官山」採用までの経緯
東京都の北多摩西部にある昭島市。多摩川と玉川上水に囲まれ、豊かな地下水に恵まれた地域で、今年(2024年)市制70周年を迎える人口約11万人の都市である。都心まで約1時間、ベッドタウンとして知られる人気の街である。
東京にあっては比較的地味な存在だが、その昭島市が昨年12月、ちょっとした話題になった。
「東京都昭島市議会が12月15日に住居表示変更の議案を可決。再開発が進むJR青梅線昭島駅北側一帯の新たな町名を代官山とすることにした」と報じられたためだ。。
新たに「代官山」の地名になるのは、もともとは工業地帯やゴルフ場の一部だった約1km2の地域で、現在の上川原町、拝島町や田中町の全エリアと大神町の一部。今後は代官山一丁目、代官山二丁目、代官山三丁目となる。再開発が進行中で、住民の増加が予想されることから新町名をつけることになった。
新町名採用までの経緯はこうだ。市は昨年7月に町民に新町名を公募した。その結果、129種の町名案が集まった。商業施設などに使われている「昭和の森」と、もともと拝島町の小字(こあざ)名として使われていた「代官山」の2案が多かったことから、審議会で専門家が議論してきた。
審議会で「代官山」を推す意見にはこんなものがあった。
〈10年、50年、100年残る町名としては代官山がふさわしい〉
〈高級感があり、実際に交差点等の名称にも使われている。古くからなじみのある地名〉
〈学生にも好評〉
その一方で、ある委員はこんな意見を述べていた。
「代官山といえば渋谷というイメージがあるものですから、なんか昭島って貧乏くさいと言いますか、田舎者だなという感じがしてしまうもので、昭島の町名を渋谷と同じ名前にする必要もないという気がしまして……」
「昭和の森」については、昭島市が昭和町と拝島町の合併で誕生した歴史(昭和の昭と拝島の島で昭島)や「昭和の森ゴルフコース」(2023年10月閉鎖)の存在などから「なじみがある」という声がある一方で、「昭島市内にある地名(昭和)や施設名と紛らわしく、緊急通報時に混同されやすい」という懸念の声も多かった。
そうしたプロセスを経て、12月の議会で新町名が「代官山」とすることが決まり、今年8月から新町名が適用されることになった。