1月1日、お正月気分の日本列島に衝撃が走った。石川県・能登半島を中心にマグニチュード7.6の大地震が発生し、志賀町では最大震度7を記録、3日夕方時点で石川県内だけで死者73名が確認されるなど各地で大きな被害を出した。
こうした直接的な人的被害のほかにも、大地震で心配されるのは原発の安全状況だ。
北陸電力・志賀原発では1号機、2号機(いずれも運転停止中)で変圧器の配管が破損し、絶縁・冷却用の油が漏れ出すなどの被害が出たが、外部への放射能の影響はなかったという。放射能漏れがなかったのは不幸中の幸いだが、能登半島地震発生の翌2日に臨時の会合を開いた政府の地震調査委員会は、「これまでに知られている活断層が動いたものではない」との見方を示している。このように巨大地震を引き起こす活断層の存在とメカニズムについては、われわれがまだまだ把握していないことが多い。
そうした中でも、原発から排出される高レベル放射性廃棄物(「核のゴミ」)を地中深くに保管する「地層処分」を国内で進めようとする動きが強まっている。地層処分は果たして安全なのか――。昨年11月に開かれたシンポジウムを取材した科学ジャーナリストの添田孝史氏がレポートする。(JBpress編集部)
地層処分の賛成派と反対派が直接対峙
(科学ジャーナリスト:添田 孝史)
原子力発電所が排出する高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)。これを地下深くに10万年保管する地層処分ができるかどうか、国内で初めての調査が北海道神恵内(かもえない)村と寿都(すっつ)町で進められています。3年がかりでまとめられた報告書原案は、今年度中にも公表される見通しです。
そんなタイミングで、地層処分に反対する研究者と、推進する原子力発電環境整備機構(NUMO)の専門家が、直接顔をあわせて意見を交わすシンポジウムが、2023年11月25日に神恵内村で開かれました*1。
登壇した岡村聡・北海道教育大名誉教授(地質学)(写真)は、何十年もこの地域を調べてきた研究者。地質学者ら約300人が出した「日本に地層処分の適地はない」という声明の呼びかけ人の一人でもあります*2。岡村さんによると、NUMOの技術者と直に討論するのは初めてだったそうです。
電力会社のお金で運営されているNUMOが催すシンポもそうですが、電力業界が主催に関わっているものは、退屈なものが多いという印象を持っていました。しかしこの日は違いました。反対する研究者とNUMOが公開された同じ土俵で議論したことで、地層処分の危うい点が、聴衆にわかりやすく鮮明に浮かび上がったからです。内容を紹介します。
*1 高レベル放射性廃棄物の文献調査に関するシンポジウム(https://www.numo.or.jp/press/annai_20231125.pdf)
*2 添田孝史 地質学者ら指摘「日本には適地ない」、放射性廃棄物「地層処分」の重大リスク(JBpress 2023年12月12日)