一方、法子英が身代金を受け取りに行った当日、帰りを待ちわびていた労栄枝は、夜10時になっても帰らないので、覚悟を決めて、檻の中の殷を殺した。そして荷物をまとめ、「私は先に行きます。愛しています」と法子英に書き残して、自宅を後にした。

 労栄枝が向かった先は、二人がいざという時に落ちあう場所に決めていた内陸部の重慶だった。警察は中国全土に指名手配をかけて、CCTV(中国中央電視台)なども駆使して必死の捜査を展開したが、労栄枝は見つからなかった――。

最新鋭監視カメラが反応

 それから丸20年の時が過ぎた。2019年11月28日、雪莉(シュエリー)という45歳の中年女性が、福建省アモイにあるショッピングモールの一角で、腕時計を物色していた。彼女は、近所のカラオケスナックに勤めるホステスだった。

 その時、中国警察が誇る最新鋭の監視カメラが反応し、指名手配犯であることを知らせた。そこで警察が時計店に駆けつけ、雪莉を逮捕した。彼女こそが、労栄枝だったのだ。その時、約3万元(約60万円)の財産しか持っていなかった。

「20年ぶりに労栄枝逮捕」――4年前、中国国内でビッグニュースとなり、彼女の裁判を、中国じゅうが見守った。