「前世紀末、被告人はボーイフレンドの法子英とともに、江西省南昌、浙江省温州、江蘇省常州、安徽省合肥で、暴力犯罪を連続して起こし、計7人を殺害した。その特別残忍な手口は、全国を震撼させた。1999年12月、法子英は、故意殺人罪、誘拐罪、銃刀法の罪で死刑となったが、労栄枝は長きにわたって、名を隠し、身を潜め、逃亡生活を送っていた……」
「心からお詫びします。心から後悔しています」
裁判長が判決文を読み終わると、労栄枝は法廷で泣き崩れて、叫び声を上げた。
「判決には不服だ、不服だ! 私は控訴する!」
そして即日、控訴したのだった。彼女を死刑にすべきかどうかを巡っては、インターネットやSNS上でも、侃々諤々の議論となった。
2022年11月30日、江西省高級人民法院も、一審判決を支持する二審判決を下した。彼女は、最高裁にあたる最高人民法院に上告した。だが最高人民法院もこのほど、一審と二審の判決を支持する判決を下し、彼女の死刑が確定したのだった。
12月18日午前、南昌市中級法院で、死刑執行がなされた。その前に、親族との面会が許された。
「ごめんなさい。心からお詫びします。そして自分の行った犯行を、心から後悔しています……」
すっかりやつれた姿で、そう述べたのが、彼女の最期の言葉となった。
【近藤大介】
ジャーナリスト。東京大学卒、国際情報学修士。中国、朝鮮半島を中心に東アジアでの豊富な取材経験を持つ。近著に『ふしぎな中国』 (講談社現代新書)、『未来の中国年表ー超高齢大国でこれから起こること』(講談社現代新書)、『二〇二五年、日中企業格差ー日本は中国の下請けになるか?』(PHP新書)、『習近平と米中衝突―「中華帝国」2021年の野望 』(NHK出版新書)、『ファーウェイと米中5G戦争』(講談社+α新書)、『中国人は日本の何に魅かれているのか』(秀和システム)、『アジア燃ゆ』(MdN新書)など。