新NISAの賢い使い方は?

 そもそも、NISAという制度の意義は、少額でもコツコツと長期にわたり積立投資を続けることで、相場の変動に大きく左右されるリスクを抑えながら、着実な資産形成を後押しすることにあります。そのため、新NISAでは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」をどのように使い分けていくかが、賢く資産運用するうえでのカギとなりそうです。

「つみたて投資枠」では、つみたてNISAと同じく、長期・積立・分散という比較的リスクを抑えた投資スタイルに合致した投資信託のみを購入できます。その数は、2023年11月14日時点で260本となっています。つみたて投資枠だけで、非課税保有額上限の1800万円を全て使うこともできます。

 一方、「成長投資枠」では、上場株式のほか、つみたて投資枠にはない幅広い種類の投資信託などを購入できます。多様な金融商品で資産を運用する投資の醍醐味を味わえる一方、成長投資枠の非課税保有限度額は1200万円で、総枠の1800万円をフルに使い切ることはできません。非課税枠を最大限に生かすには、「つみたて投資枠」との併用が必要となります。

 新NISAでは、購入した株式や投資信託などを売却した場合、その分の投資枠を再び他の金融商品への投資に回すことも可能になりました。「つみたて投資枠」では長期で運用しながら、「成長投資枠」では相場の変動などを見ながら短期で投資先を入れ替えていくといった、各自のリスク許容度にあった投資スタイルを見出していく必要があります。

 ただ、個人に対する投資教育が十分になされてきたとは言えず、バブル崩壊の苦い教訓から「投資は怖い」というイメージを抱いている人も少なくありません。投資信託の最小購入金額100円からで、毎日積み立てることもできます。まずは、余裕資金から少額を積み立て、投資のリスクに慣れていくことが必要でしょう。

 岸田首相は、日本を「資産運用立国」にするという目標を掲げ、外資を積極的に呼び込むなど資産運用の裾野を拡大していこうとしています。かつて金融業界では、投資信託を短期で買い換えさせて手数料をかせぐ「回転売買」が横行し、顧客からの信頼を損なったことがありました。金融庁は、これまで以上に「顧客本位の資産運用」を実行するよう業界に強く働きかけています。

 政府や金融業界などの思惑通り、新NISAで「貯蓄から投資へ」という資金の流れは本格化するのでしょうか。それは、個人が投資にどこまで前向きになれるか、そして、資産運用会社が顧客本位の姿勢をどこまで徹底できるか、この2点にかかっていると言えそうです。