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少額投資非課税制度(NISA)の拡充を控え、投資についての関心も高まっている。初心者によく勧められるのは積立投資だが、マーケットの動向次第では思わぬ損失もあり得る。NISAを上手に活用するためにも、シミュレーションも交えながら、積立投資で知っておくべきポイントを説明する。

(平山 賢一:東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)

資産が増えた後のマーケット動向に左右される

 2024年からNISAが拡充される。非課税保有期間が無期限化され、非課税保有限度額が積立投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)を合わせて1800万円まで引き上げられるため、個人の金融資産の運用にとってはありがたい。

 課税と非課税では、実質的な投資成果が大きく違ってくるので、新制度を有効に使いたい。従来の非課税保有期間は、2014年に創設された「一般NISA」が5年間(非課税保有限度額600万円)、2018年に創設された「つみたてNISA」が20年間(同800万円)であったことからも、本格的な長期投資の実践が可能になるだろう。

 一定期間ごと(毎月など)に金融商品などを購入していく積立投資は、少額の資金でも始められ、自動的に資産の積み上げが期待できる。投資初心者にとっても踏み出しやすいと言われている。一定額を積み立てるので、価格が高いときは買える口数が少なく、価格が安いときには買える口数が多くなり、平均すると購入価格を下げることができるとされる(ドルコスト平均法)。

 しかし、長期にわたり価格が上昇し続ける局面では、買い付けた平均価格が、一括投資よりも高くなってしまう点もあり、注意が必要だ。金融環境の違いを考慮すると、やはり決定的な投資手法があるわけではないと言えよう。さらに、最終的な積立投資の成果は、資産累増後の収益率に左右されるという特徴に注意する必要がある。以下ではこの点について確認していきたい。

 一括投資の場合には、毎年毎年の収益率の順番を入れ替えても、最終的な投資成果は変わらないが、積立投資の場合には、その順番が大きく左右する。一括の場合には、投下した元本が一定であるものの、積立投資の場合には、元本が徐々に増加していくからである。

 積み立てを始めたころに、株価が大暴騰しても絶対額としての資産増加は限られる。一方、投資額が増加してからの大暴騰による資産増加額は比較にならないほど大きくなる。

 最も警戒しなければいけないのは、これとは反対に大暴落を迎えるケースだ。せっかく大きく積み上げた資産も、最終局面で大暴落を経験すると、その多くを吹き飛ばしかねないからである。