米国経済はパンデミックからの回復ぶりが目覚ましく、ドル高はインフレの抑制に寄与している。
有権者にとっては経済成長や雇用よりもインフレ抑制の方が優先順位が高いようで、米連邦準備理事会(FRB)も利下げをしやすくなる。
バイデン大統領自身の干渉主義的な産業政策は、輸出向けではなく、電気自動車(EV)など国内市場向けの製品に的を絞っている。
そしてトランプ政権からほぼそのまま受け継いだ中国からの輸入品に対する関税は、過小評価された人民元から米国企業を守っている。
米ドルの国際的な地位は不変
米ドルが循環的にも構造的にもここ数年間ほとんど変化していないことには目を見張る。
米ドルの実効レートはここ2年間で約10%上昇したが、これは基本的に、経済成長の見通しが良好で金利も高いという典型的な要因の反映だ。
また、昨年の今頃に見られたドル安と、ここ1カ月間のドルの弱含みは金利差の縮小とともに生じていた。
米ドルの国際的な役割がひどく浸食されている兆候もほとんど見られない。確かに、中国人民銀行(中央銀行)はスワップラインを使って人民元を貸し付ける国を増やしている。
新しい貸し手を見つけて現金を引き出すことにかけては1世紀を優に超える経験があるアルゼンチンもその一つだ。
また、ウクライナ関連で米国が講じた貿易・金融取引の制裁を回避するために、中国が相手国の通貨で貿易取引に応じることも多少はある。