(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年11月18・19日付)
通貨戦争は一体どこに行ってしまったのか。
対米ドルで見た中国人民元は2008年以来、日本円は1990年以来の安値をつけている。
中国の経常黒字は、計測が適切であれば記録的な規模に向かって膨らんでいるか、もうそのレベルに達している。
ホワイトハウスは米国製造業の下支えと、中国の不正競争行為と見なす慣行への対策で頭がいっぱいだ。
それにもかかわらず、ジョー・バイデン大統領と習近平国家主席が15日に行った会談では、為替レートの件はほとんど触れられなかった。
為替レートが騒がれないワケ
これは凪(なぎ)だが、この静けさがずっと続くことは考えにくい。
為替レートのミスアライメント(ファンダメンタルズ=経済の基礎的条件=に沿った水準からの乖離)をめぐる戦いをもたらした要因は消え去っていない。
特に中国は、長期に及ぶ緊張状態が20年前に始まるきっかけになった重商主義的な行動に逆戻りする恐れがある。
米国は貿易を歪める中国の保護主義や国内企業への補助金に強く反発しているものの、人民元の価値や中国の貿易収支についてはそれほど騒いでいない。
米財務省は先日、半期ごとにまとめる為替報告書――かつて中国を為替操作国に正式認定した報告書――を公表したが、波風はほとんど立たなかった。
これには理由がいくつかある。