(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年11月8日付)
1919年11月19日、米議会上院はベルサイユ条約の批准を否決した。
米国はこれにより、第1次世界大戦後に合意された状況を維持する仕事から手を引き、その役目は現状を維持する意思も手段も持たない英国とフランスに委ねられた。
やがて第2次世界大戦が勃発した。
2度目の大戦の後、米国ははるかに建設的な役目を果たした。現在、世界はまだ多くの面で米国が作り上げたものだ。
だが、この状態はあとどれぐらい続くのだろうか。そして、その後の世界はどのようになるのだろうか。
次の米国大統領選挙の結果はこれらの問いに決定的な、しかし途方もなくひどい答えを出してくるかもしれない。
不穏なほど高いトランプ再選の可能性
最近行われたいくつかの世論調査によれば、米国の有権者のほぼ55%はジョー・バイデンの仕事ぶりに不満を表明している。
また、投票日が1年後に迫った大統領選挙でドナルド・トランプとバイデンのどちらを選ぶかという問いに対しては、トランプがわずかにリードしている。
さらに、これらの世論調査の結果からは、最も重要な6つの「激戦州」のうち5州でトランプがバイデンをリードしていることがうかがえる。
つまり、トランプが勝利する可能性は明らかに、それも心配になるほど高いのだ。
こうしたデータは果たして何を意味するのか。
その答えのうち最も重要なのは、世界最強の民主主義国であるだけでなく20世紀の民主主義を救った国でもある米国が、民主主義の規範にもうコミットしていないということだ。
その根幹にあるのは、権力は自由かつ公正な選挙を経て勝ち取らねばならないという規範だ。