中国政府は経済成長を続けたいと思うあまり、1990年以降に中所得国入りを目指した時の輸出主導の経済モデルに全面的に回帰するかもしれない。

 米外交問題評議会のブラッド・セッツァー氏が指摘するように、中国は経済を完全雇用に戻す政策を2つの選択肢から選ぶことができる。

 財政支出で国内消費を増やす政策か、為替レートを元安に誘導して貿易黒字を拡大させ、国内景気の弱さを打ち消す政策のどちらかだ。

 もっと言えば、中国は生産能力(特にEVと半導体の生産能力)獲得に巨額の投資を行っており、供給力が過剰になりつつある。

 この過剰は外国向けの製品を作ることで解消しなければならない。

 欧州連合(EU)はすでに、中国からのEV輸入の急増を予期しており、その勢いを削ぐ反補助金税の導入を検討している。

通貨戦争が再燃する日

 輸出市場をめぐる重商主義的な争いは、通貨戦争再来の可能性を大幅に高める。

 為替レートのミスアライメントと経常収支の不均衡の是正については、2000年代から2010年代にかけて何年も議論が交わされたにもかかわらず、平和をもたらすための政策についての合意は確立していない。

 国際的な不均衡は国内のミスアライメントを反映している。

 中国の経済成長が滞れば、その影響は貿易の対象になるほかの国々の産業にすぐに波及する。

 経済成長の減速、対外収支の赤字や黒字の拡大、そして通貨戦争は、いとも簡単に再開される可能性がある。

By Alan Beattie
 
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