濡れ衣で退学処分
Sさんへのバッシングはまだ続いた。“万引き事件”直後の08年11月には、劇場内に落ちていた財布を拾ったSさんが、これを届けることなく9日間自室で放置していたという事件も作られた。
確かにSさんは財布を拾った。現金は入っていなかった。ただSさんは、独断で警察に届ければ新たないじめの口実になるかもしれないと判断し、信頼できる上級生に相談するまでの数日間、自室で保管していた。それを同級生にチクられてしまったというのが事の真相だった。
だが学校側は財布を拾ったSさんが現金をネコババしたものと判断、しかも財布は観客のかばんに入っていたものを盗んだ、としたのである。
Sさんは学校側の聴取に際し、こう反論した。
「私は盗んでいませんし、拾った時には現金は入っていませんでした。もし盗んだ犯人だとしたら部屋に財布を置かずに、すぐどこかに捨てるんじゃないですか?」
筆者には真っ当な主張に聞こえるが、学校側はその反論を受け入れることはなかった。そして、あろうことか、その前の万引き事件を理由にSさんを退学処分としたのである。