「いじめ」を頑なに否定
11月14日、宝塚歌劇団の木場健之理事長らが記者会見を開いた。劇団員のAさん(25歳)が9月末に自ら命を絶ったとみられている件に関し、外部の弁護士による調査チームの報告書がまとまったことを受けての会見である。
この会見で木場理事長は、長時間に及ぶ活動などに対する歌劇団側の管理責任を認めて謝罪をしつつ、週刊文春が中心となって報じてきた上級生によるいじめ・パワハラについては否定した。
同日、Aさんの遺族側弁護士も会見を開き、いじめ・パワハラを否定したことについて「事実認定と評価は失当だ」と宝塚側の主張を批判した。
しかし筆者は、宝塚側が「いじめの事実がありました」などと謝罪することはないと確信していたし、そのような報告書が上がってくるとも思っていなかった。
なぜなら筆者は2009年から10年にかけて、宝塚音楽学校内で起きた陰湿ないじめ事件を取材した経験があり、このとき宝塚音楽学校や歌劇団内のいじめが起きやすい体質、そして問題が起こっても問題の根本を改めようとせず、全力で隠ぺい工作に走る宝塚の構造を目の当たりにしたからである。
ただ当時は、宝塚側の堅いガード、そして何よりいじめの被害者側がタイミング的に記事化を望まなかったこともあり、世間にむけて宝塚の実態を明らかにすることができなかった。そして、もしあの時、記事にできていれば、今回のAさんの事故は起こらなかったかも知れない。そう思うと忸怩たる思いがある。
その懺悔の意味も込めて、当時、筆者が取材した内容をここに明らかにすることにする。