宝塚音楽学校96期の壮絶ないじめ事件

「私の知人が宝塚に入ったんですけど、寮内でひどいいじめに遭ってしまっているみたいなんです。なんとか助けてあげられないですか」

 盛岡市在住の知人から、週刊誌の記者をしていた筆者の元にそんな相談の電話があったのは2008年12月のことだった。知人から聞くいじめの内容と宝塚音楽学校の対応は信じられないものだった。筆者はすぐ盛岡に向かい、知人から詳しく話を聞くことにした。

 宝塚の華麗なステージに立つには、ご存じのようにまず宝塚音楽学校へ入学しなければならない。定員は毎年40人と決まっており、08年3月の試験では854人が応募していた。倍率は21.35倍という狭き門である。

 Sさんは頭脳明晰で、市内の県立進学高校に進んでいた。その一方で、幼いころからバレエ教室に通っており、高校進学後は宝塚歌劇団に憧れを抱くようにもなっていた。身長は172センチ、誰もがハッとするような美人でもあった。宝塚への憧れが日に日に強くなったSさんは、高校1年生の時に宝塚音楽学校を受験、見事合格を勝ち取った。合格の一報は地元紙でも記事になった。美貌と長身を持つSさんだけに、「将来はトップスターになるのでは」と地元の人々から期待されていたという。

宝塚音楽学校=兵庫県宝塚市宝塚音楽学校(写真:共同通信社)

 高校を中退し、宝塚へ向かったSさんは、96期生として晴れて憧れの宝塚音楽学校に入学した。自宅から通学できる生徒以外は、学校が運営する「すみれ寮」から通学するのが決まりになっている。Sさんもすみれ寮に入寮した。そこから学校に通い、予科(1年生)と本科(2年生)、計2年のレッスンを経て卒業すると、宝塚歌劇団員となり、ステージに立つ一歩となるワケである。