「すみれ売り」での出来事

 最初の“事件”は5月に起きた。

 宝塚音楽学校では、5月の日曜日に2度、予科生・本科生がそれぞれ、公演の開演時間前に宝塚大劇場にて、「すみれ募金」と称し、難病の子どもたちを支援のための募金活動を行うのが恒例となっている。

宝塚大劇場宝塚大劇場(写真:共同通信社)

 音楽学校の生徒が袴姿で一堂に会し、募金に協力してくれた人にすみれの造花を配ることから「すみれ売り」とも称される伝統行事だ。ファンにとっては、初々しい将来のタカラジェンヌと間近に接することができる貴重な機会にもなっている。

 このすみれ募金でSさんは、ファンからの熱い注目を浴びたという。一部のファンがネット上に「Sさんが一番綺麗だね」と書き込んだようで、それに嫉妬した同期生からのいじめが始まった。

 もともと音楽学校を受験する生徒の大半は、関西在住者、次いで東京を中心とする首都圏在住者が中心だ。そうしたなか、岩手出身のSさんは稀有な存在だった。そこに妬みが絡まり、いじめが始まったようだ。

 すみれ売りを機に、Sさんは寮内で「存在を消して」「死ねばいいのに」「私の視界に入るな」といった雑言を受けるようになった。