相次ぐ駆け込み申請、役所も会社も対応遅れ

【ケース2】インボイス番号を照合できない

 タレントのCさんは法人を設立して、芸能事務所と業務委託契約を結んでいる。Cさんの法人はこれまで免税事業者だったため、芸能事務所に「インボイス登録は必要か?」と今年初めから問い合せていたが、ずっと回答があいまいなままだった。ところが、9月中旬になって「インボイス登録をしてほしい」と頼まれたため、Cさんは慌ててインボイスの登録申請をした。

 税務署からいまだにインボイス番号の通知は来ていないが、法人の場合は法人番号の頭に「T」を付けたものがインボイス番号となるため、その番号を芸能事務所へ提出した。しかし、10月になって芸能事務所から「国税庁HPでインボイス番号が有効か確認ができない。本当に登録したのか?」と問い合わせがあった。

 9月にインボイス登録の駆け込み申請が相次ぎ、個人事業主の場合、10月中旬時点で申請から番号付与までに1カ月~1カ月半がかかっているという。

 ケース2の場合、国税庁での受付処理が追い付いていないことが原因とみられる。だが、Cさんは芸能事務所に対して「インボイス登録が必要かどうかの判断を引き延ばしていて、挙句の果てに番号が照合できないと言われても…」と憤る。

 Cさん側に混乱をもたらしたインボイスだが、短期間に番号の登録・確認を処理しなければならない芸能事務所の経理担当者の負担も重いはずだ。

 9~10月に駆け込みでインボイス登録をした事業者は多い。加えて、会計ソフトの中にはインボイス対応のシステムにアップデートされたのが10月に入ってからというものもあるという。この結果、経理部門は事前準備もできず、10月になって一気に膨大な番号打ち込み作業が発生しているケースも珍しくない。ある税理士は「クライアントの中小企業の経理担当者は、インボイス番号の打ち込みと国税庁HPでの照合・確認で忙殺されている」と話す。