衝撃…のち、不信感

1. 沿線自治体間の協議がスタート

 近江鉄道のギブアップ宣言は、沿線自治体に大きな衝撃をもたらした。

「近江鉄道の経営が苦しいことはわかっていた。でも、急にギブアップするとは思わなかった」

 首長を含め、多くの関係者がこう驚いたことは想像に難くない。沿線自治体からはこんな声も聞こえてきた。

「近江鉄道の会社全体でみれば、バス関連事業やサービスエリアの受託などで黒字になっていると聞いている。であるなら、会社全体の黒字で赤字の鉄道を支えたら良いのだ」

「仮にそれが難しいのなら、親会社の西武鉄道に助けてもらえばいい。そもそも西武鉄道の創設者の堤康次郎は近江鉄道線沿線の愛荘町の出身だ。窮状を丁寧に説明して援助を求めればいいのではないか」

「廃線は困る。近江鉄道を利用している市民・町民の足の確保など、どうすればいいのか」

「税収は潤沢にあるわけではない。支援を求められた場合、近江鉄道を支えるような予算を捻出することができるだろうか」

「できれば、なんとか近江鉄道自身に鉄道の運営を継続してもらいたい。そのための創意工夫の余地が、まだあるのではないか」

「ここに至るまでに十分な協議もなかった。唐突なギブアップ表明は、かなり身勝手ではないか」

 近江鉄道線をめぐる不安と不信感が、一気に吹き出した。