毎年10月は「ピンクリボン(乳がん啓発)月間」である。9人に1人の女性が罹患する乳がんは、2019年の調査で日本人女性が罹患するがんのトップとなった。その数は9万7142例(男性は670例)*。これだけ多くの人が罹患することは、当事者だけでなくその周りにいる人たちにも大きな影響を与える。だからこそ、この病気を知り、がんと共に生きる人を支えようというのがピンクリボン月間だ。
* 国立がん研究センター「がん情報サービス」より
ピンクをまとった男性たちが募金活動をするアメリカ
ピンクリボン月間のアメリカでは、一風変わったキャンペーンが展開されている。米国対がん協会(American Cancer Society)の「Real Men Wear Pink」は、男性たちが何かしらピンクのものを身につけて寄付を募り、乳がん撲滅の関心を高める活動を全米で行うのだ。
ピンクを身にまとって活動する男性は、各地域から自薦・他薦によって“アンバサダー”として選ばれる。身近な人を乳がんで亡くした人もいれば、コミュニティで強い影響力を持つ人もいる。それぞれが個人、仕事、ソーシャルメディアなどのネットワークを通じて、より多くの人に乳がんについて意識を高めることを呼びかけ、米国対がん協会を支援するための寄付を集める。
2022年に最高額を集めたのはアトランタ州在住のジェイミー・ウォルトンさんで、約16万ドル(約2400万円)。トップに与えられる栄誉は、「ナンバーワン・アンバサダーになったことを自慢できる権利」だ。
テネシー州ナッシュビルのアンバサダーになったミュージシャンのポール・テイラーさんは、母が生前に乳がんを患ったこと、義母が乳がんによって他界した経験がある。地元やバンド活動のコミュニティで名の知られたテイラーさんは、ナッシュビルのアンバサダーに推薦された際に、迷わず「Yes」と答えたという。