米軍の水陸両用強襲輸送車(AAV7)、米海兵隊のサイトより

 これまで、日本が誇る「10式戦車」や「16式機動戦闘車」について、その性能やライバルとの比較、開発の歴史などを紹介してきた。

 今回は、万が一台湾有事となり尖閣諸島も戦場の一部となった場合、とりわけ活躍が期待される水陸両用強襲輸送車(AAV=Assault Amphibious Vehicle)について解説したい。

 後述するが、米国の海兵隊が、日本が開発中の最新鋭AAVを採用するかもしれないのだ。世界一厳しい目を持った軍隊が、日本の技術力を評価しているのである。

 本題に入る前に、水陸両用戦闘車について、その歴史と現状、世界の趨勢を見ていきたい。

 2013年12月17日新防衛計画の大綱および2014年からの5年間にわたる中期防衛力整備計画を踏まえ、2018年3月、陸上自衛隊相浦駐屯地に水陸機動団が編成された。

 水陸機動団は約3000人の隊員と主要装備である58両のAAV7(水陸両用強襲輸送車=Assault Amphibious Vehicle, personnel.model7)をもって、緊張感漂う南西諸島防衛のため、海・空自衛隊、米軍などと日夜厳しい訓練に精励されている。

 国民の一人として大変心強いものがあり、感謝申し上げたい。

1. AAV7とは

① 概要

 本車両は米国で開発された水陸両用の人員輸送車であり、アムトラック(Amtrak)の愛称がある。

 米韓合同軍事演習実施のたびに、テレビのニュース番組で海岸から陸地に向け攻撃態勢をとる米韓海兵隊の水陸両用車両を御覧になった方も多いと思う。

特性

・地上のみならず水上を浮上航行する水陸両用車両であり、水上ではウォタージェット推進を利用するが、履帯(陸上用のキャタピラー駆動)だけでも時速7.2キロの推進が可能である。

・本来LVTP7の名称で米国海兵隊における上陸強襲作戦用に開発されたが、湾岸戦争・イラク戦争では陸上おいて装甲人員輸送車(Armored-Personnel-Carrier)、歩兵戦闘車(Infantry-Fighting-Vehicle)として増加装甲を装備したタイプが運用された。

主要諸元

・乗員:3人+兵員25人または貨物4.5トン
・全備重量:約25.6トン
・全長:8.16メートル
・全幅:3.26メートル
・全高:3.31メートル

・エンジン:V型8気筒2ストロークディーゼルエンジン、400馬力またはV型8気筒4ストロークターボチャージャー付ディーゼルエンジン、520馬力

・速度:時速72.4キロ(地上整地)、時速13キロ(水上航行、ウォタージェット)

・武装:12.7ミリ重機関銃、40ミリ自動擲弾銃