日本代表を引っ張る先輩・後輩
ラグビーワールドカップ・フランス大会予選プールも後半戦。日本代表にとっては負けられない戦いが続く。ここからはいかに「One Team」として戦えるかがカギとなる。そして、チームを一つにまとめる「扇の要」役となるのがキャプテンであり、バイスキャプテン(副キャプテン)である。
今回の日本代表で言えば、姫野和樹キャプテン、流大バイスキャプテンだ。実はこの二人、帝京大学の先輩後輩の間柄。流の方が姫野の2学年上の先輩にあたる。彼らはどんな学生生活を送り、どのようにしてチーム統率力(キャプテンシー)を身につけたのか。
日本代表のキャプテン、バイスキャプテンを帝京大学で指導された岩出雅之前監督の話をもとに、彼らの学生時代の成長ぶりや統率力が育った背景などについて考察していきたい。
今回は姫野和樹キャプテンについて見ていく。
「あの姫野があいさつに来た!」
日本代表キャプテンを任されている姫野。だが、若い頃の彼は組織の先頭に立って引っ張るというより、自身のプレーにのみ集中するタイプだった。さらにもう少し言ってしまうと、どちらかと言えば「幼い、可愛げのあるやんちゃ」(岩出前監督談)なタイプだった。
あるエピソードがある。姫野が大学3年時の春シーズン、帝京大学は愛知県の瑞穂ラグビー場で練習試合を行った。愛知県は姫野の故郷。会場には、試合の運営に携わる愛知県ラグビー協会の方々がたくさんいたが、その中の一人が岩出監督(当時)にこう言った。
「岩出先生、あの姫野が私のところにあいさつに来たんですよ。高校時代は私にあいさつなんて決してしませんでしたよ。いったい、どんな素晴らしい教育をされているんですか?」
岩出前監督はこの話を笑いながら姫野に伝える。
「愛知県協会の先生が『あの姫野があいさつに来た』ってびっくりされてたぞ。お前、どんな高校生だったんや?」
姫野も苦笑するしかなかった。