5.中国経済の先行き

 中国経済の回復はこれからの経済政策運営にかかっている。

 不動産市場の長期停滞、地方財政の悪化、若年層の失業、米中摩擦など課題山積だが、中でも最も重要なポイントは政策が生み出す具体的な成果が企業経営者や消費者のマインドを明るくして将来の回復に対する自信を持たせることができるかどうかである。

 特に、一昨年以来の共同富裕政策や昨年のゼロコロナ政策の影響で民間企業は前向きの意欲を削がれている。

 政府の政策運営に対する信頼も低下している。そのマインドを改善することができるかどうかが経済を回復軌道に乗せるカギである。

 現時点では、従来からの2つの大きな基本方針に変化は見られていない。一つは、「2つのいささかも動揺しない方針」として国有企業と民間企業の両方を大切にすること。

 もう一つは、高い質の発展である。

 中国ではこの「高い質」という言葉の中に共同富裕の実現と国家安全の重視という意味も含まれていると理解されている。

 これらの基本方針は重要であるが、この言葉を繰り返している状況の下で民間企業や消費者は意欲を低下させたのも事実である。

 実態として銀行貸出条件、市場参入等の面で依然として国有企業の方が民間企業より有利な面が多く存在しているためだ。

 現在の難局を打開するには、これらの2つを超える、民間企業や消費者の心を沸き立たせるような新たな基本方針と、それを明確に裏づける具体的な政策パッケージを実行することが必要である。

 コロナ前までは劉鶴副総理の総指揮の下、中国政府は見事な政策運営を長期間続けてきたが、その総指揮官はもういない。

 その後継者たちがどのような政策を示し、迅速かつ全国に徹底する形で実行に移すことができるか注目されている。

 その核心となる中長期の政策運営基本方針を提示するのが今秋に予定されている三中全会である。

 そこで示される中長期の政策運営基本方針の内容において劉鶴副総理の後継者たちの真価が問われる。

 2010年代以降、世界経済を支える重要な役割を担ってきた中国経済が、新たな体制の下で順調に回復へ向かうことを願っている。