不登校は「育ち方の一つ」
──石井さんは不登校に関する取材を長年されています。不登校の子どもの数は右肩上がりで増えていますが、「学校に行かなくなる」ことそのものを、どのように見ていますか。
石井:「不登校は育ち方の一つだ」と強く思いますね。学校に行けなくなったから、その後社会復帰できない、ということは非常に稀なケースであり、みなさん紆余曲折ありながら、ご自身の人生を歩まれています。不登校を経験した人が、なぜ不登校になったかを冷静に分析できるようになるまでには、長い時間を要します。私も、10年経ってはじめて分かりました。
ですから、心の傷を抱えている子どもが学校に行けない理由を正確に説明するのは、ほとんど不可能だ、と考えてください。理由の分析より何より、大事なのは「子どもが今笑顔かどうか」を一番に考えることです。
不登校になるとどうしても未来に起こりうることを先回りしすぎて、不安になりがちです。でも、子どもが今この瞬間、笑顔であれば心の傷も少しずつ回復し、結果的に外の世界に出ていく期間も短くなるものです。
子どもにとっては、ありのままの自分を受け入れてくれる「安全基地」が必要です。自分の家で、自分が安心して過ごすことができれば、子どもは学校や地域社会という外の場所に失敗しながらでも冒険することができるようになります。
学校を休んでいる期間は、子どもにとっての幸せとは何かを考えるまたとない機会だ、とも言えるかもしれません。不登校の期間は親子にとって、決して悪い時間ではないのですよ。