(国際ジャーナリスト・木村正人)
「裏切者は代償を支払わされた」
[ロンドン発]モスクワの北西にある露トヴェリ州で墜落し、乗客7人乗員3人が全員死亡した民間航空機に「プーチンの料理番」こと露民間軍事会社ワグネルグループ創設者エフゲニー・プリゴジン(62)と同ドミトリー・ウトキン(53)が搭乗していたと23日、ロシア民間航空局が発表した。航空機はモスクワからサンクトペテルブルクに向かっていた。
英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)のロシア・ユーラシアプログラム副ディレクター、オリシア・ルツェビッチ氏は英BBC放送にこう語った。
「プリゴジンは6月にワグネルの反乱に失敗して以来、いつまで生き延びられるのかと専門家は推測してきた。ウラジーミル・プーチン露大統領にとって明らかな裏切り者の彼は代償を支払わされたようだ」
プリゴジンと、ロシア治安組織や軍情報機関内のシンパはセルゲイ・ショイグ露国防相やワレリー・ゲラシモフ軍参謀総長が主導するウクライナ戦争の戦い方を辛辣に批判してきた。「ロシアは大きな損失を被っているため、プーチンはその地位に安住できず、プリゴジンはその座を脅かす存在だった」とルツェビッチ氏は指摘する。
米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官は7月、米メディアにこんな見方を示していた。
「プリゴジンは試食係をクビにせず、プーチンに気をつけるべきだ。プーチンは『復讐は冷めてから食べるのが一番だ』と考えている。プーチンはプリゴジンをワグネルから引き離し、彼を弱体化させようとするだろう」