ここ数か月、韓国では歴史問題をめぐる対日非難はほとんど見かけず、朝鮮日報と中央日報は再三、韓国における反日運動の落日を印象付ける記事を掲載している。

 過度な反日はむしろ批判の対象だ。元慰安婦や元朝鮮半島出身労働者(いわゆる「元徴用工」)問題などで日本を一方的に非難し、いつまでも日本の謝罪にこだわる動きがあった。最近の韓国では、そうした動きに対する醒めた見方が広がっている。これは今までなかったことである。

野党の矛先は「歴史問題」から「福島処理水」に

 韓国の野党、メディア含めた国内世論から日本の歴史問題は姿を消しており、対日批判、対政府批判の重点は福島第一原発の処理水放出問題にシフトしている。

 ただ、民主党の福島原発処理水放出に関する抗議行動のやり方は支離滅裂である。

 民主党はまず、地方を巻き込んだ全国運動に展開しようとしたが、反響は広がらなかった。次いで、在韓中国大使館と共闘しようとしたが、これが尹錫悦大統領の対中政策批判に発展して、逆効果となった。

 国際原子力機関(IAEA)が処理水放出に関し、IAEAの安全性基準を満たすとの最終報告書を発表すると、民主党は「IAEAの独自検証ではない。日本政府と東京電力の見解と想像だけを書き写した空っぽの報告書」「IAEAは福島の核廃水の安全性検証責任を放棄した」と非難した。これは原子力分野の最高権威であるIAEAを否定する見解である。

 そもそも民主党の主張は科学的な根拠に基づかず、国民に恐怖を植え付けるデマ政治の様相を呈している。

 韓国の放送局は処理水放出に反対の立場をとる番組を制作しようと思っても、「汚染水の放出が問題になることはない」と主張する科学者はすぐに見つかるが「汚染水の放出は危険だ」とする科学者は事実上、ほとんど見つからなく、番組作りも難儀しているという。