ミシュスチン首相はいまでも事実上のナンバー2

「後継者」の投稿は、①大統領の信頼、②大統領との親密さ、③権力機構における地位と経験、④将来性、⑤エリート内の支持、⑥公共政策の知識と能力――を基に選定したとしている。このうち最も重要なのは、「プーチンに近く、信頼関係が深いこと」だという。

 20人はいずれも政権中枢に近いエリートで、後継者は政権内部から選ばれるとの見立てだ。プーチン氏はこれまで、与党・統一ロシアの推薦候補として当選しており、後継者が誕生する場合、プーチン氏の指名または承認を得て、与党から出馬することになる。ロシアの選挙は不正の多い「官製選挙」であり、大半は与党候補が当選する。

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 ランキングでトップのメドベージェフ氏は、政権内リベラル派から極右に転向し、頻繁に核の恫喝を行うなど、ロシア国内でも顰蹙を買っている。しかし、投稿は「プーチンから絶対的な信頼を得ており、一度大統領を務め、最も現実的な候補者」としている。

 2位のミシュスチン首相は、大統領が職務執行不能に陥った場合、大統領代行に就任し、憲法規定では事実上のナンバー2だ。欧米の経済制裁の中で、テクノクラートを束ねて堅実な経済運営に当たっており、独立系世論調査機関、レバダ・センターの調査では、支持率は70%台と高い。前任のメドベージェフ氏の首相時代後半の支持率は30%前後だった。

 3位のキリエンコ氏は政権の政治戦略を担い、「独自のエリート・グループを形成し、政権システムの再編成を行っている」という。ただし、リベラル派からの転向組で、名前がウクライナ系であることも、後継候補としてはマイナス材料だ。

エリート2世も登場

 4位のパトルシェフ農相の父は、プーチン氏のKGB(国家保安委員会)時代の先輩で、政権を支える実力者、ニコライ・パトルシェフ安保会議書記。その長男である農相は銀行家出身で、経済学博士号を持ち、サラブレッドとして注目されている。投稿は「パトルシェフ一派は北極海航路の利権を持ち、北極海港湾開発で政府の助成を得た」としている。農相の実弟は研究機関「北極イニシアチブ・センター」の代表を務める。

 5位のトルチャク上院議員の父もサンクトペテルブルク時代、プーチン氏の柔道仲間でオリガルヒ(新興財閥)だ。「プーチンの金庫番」とされるユーリー・コワルチュク・ロシア銀行会長の子息で、20位に付けたボリス・コワルチュク氏と併せ、政権エリート2世が台頭してきた。

 6位のソビャーニン市長は9月のモスクワ市長選に出馬する。「65歳で、さらに続投するなら、将来の選択肢は狭まる」という。

 7位のデューミン知事はプーチン氏の元ボディーガードで、忠誠心が強い。国防次官を務め、2014年のクリミア併合で暗躍するなど、プーチン氏の懐刀だ。投稿は、「デューミンは『プリゴジンの乱』の鎮圧に極めて重要な役割を果たした。連邦政府のポストに抜擢される見通しで、国防相の可能性があるが、ショイグ国防相が復活しつつあり、不透明になった」としている。

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