(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年8月11日付)

西アフリカのニジェールの首都ニアメーでは先月、同国の文民政府を追い出したクーデターへの支持を表明するために大勢の人が街頭へ繰り出した。
その時、段ボールの端切れにペンで殴り書きされた標識がひときわ目を引いた。「La France doit partir」とある。
フランスは出ていけ、ということだ。
無作法なくらい大急ぎでアフリカの元植民地を捨て去った英国のような他の宗主国とは異なり、フランスはとどまった。
ポスト植民地主義の「あなたが壊したのだから、代金を払え」学派とでも呼べそうな意識のためか、それまで所有物だった国を支配し、利益を得ようとする永続的な野望のためか、フランスは亡霊のように徘徊した。
政治とビジネスに干渉し続けた旧宗主国
フランス政府は60年以上にわたり、後に「フランサフリック」(アフリカにおけるフランスの勢力圏)として知られるようになったなれ合いのシステムで大陸の政治とビジネスに干渉してきた。
フランス政府の高官はお気に入りの大統領との間にホットラインを設けていた。フランス企業は儲けの大きい契約を獲得した。
ニジェールを含む西アフリカ、中央アフリカ14カ国は、フランス政府が保証人となった通貨CFAフランを使った。
これは各国に英国の旧植民地がうらやむ為替レートの安定をもたらした。
だが、利益を本国へ送還するフランスの投資家と、ハードカレンシーで購入するフランス製高級品が好きなアフリカのエリート層にも都合がよかった。