(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年8月3日付)
中国経済には、何かに似ているという指摘が通用しない。
過去40年間の経済成長が前代未聞のハイペースだったように、現在の苦境――危機とは言わないまでも、問題を抱えていることは間違いない――も独特だ。
今の中国は1990年の日本とは違うし、1997年の韓国とも2008年の米国とも違う。
金融危機にもバランスシート不況にも直面していない。それどころか、今年も年率5%の経済成長を達成する軌道におおむね乗っており、景気後退に向かっていない。
それにもかかわらず、状況は深刻だ。
過去には、中国政府が創意工夫と見事な柔軟性を発揮して経済成長を維持したことがあった。今回もそうしなければならない。
デフレスパイラルに陥る危険
現在の苦境の特徴は、経済が成長しているにもかかわらず、慢性的な需要不足が見られることだ。2つの統計がそれを物語っている。
1つは消費者物価指数(CPI)。
6月は前年同月比で横ばい、前月比では0.2%の下落となっており、中国がデフレの瀬戸際に立たされていることが分かる。
もう1つは若年層の失業率で、6月には21.3%に達している。
これは明らかに、支出が不十分なために生産的な資源をすべて活用しきれていないことを示している。
つまり、中国経済は「リセッション的な成長」と呼べるかもしれない状況にある。