(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年7月27日付)

最近受けた健康診断で、筆者は心臓が止まるような思いをした。
あるアフリカ系米国人の看護師が、ドナルド・トランプが大統領だった時は今よりずっと暮らし向きがいいように感じたため、来年は恐らくトランプに投票すると言った時のことだ。
米国の民主主義の未来についてはどう思うのかと聞くと、「それについて考える時間はあまりないですね」と返してきた。
ではジョー・バイデンの経済改革はどうなのか。「実感はないです」と言った。
マクロ経済の指標では好調なのに・・・
断片的な逸話はミスリーディングなこともある。だが、この看護師の見方を裏付けるデータがある。
トランプ時代には、米国のブルーカラーの賃金の伸びが数年ぶりにインフレ率を上回った。バイデンの下では、実質ベースで減少した。
バイデンの経済運営を評価する米国人が全体の3分の1にとどまるのは、このためだ。
また、これはバイデンの政策が黒人を助けたと言う人がアフリカ系米国人(圧倒的に民主党支持者が多い層)の3分の1にとどまる理由でもある。
米国の有権者が困難な状況下で大統領がどう行動したかを評価したとすれば、2024年大統領選でのバイデンの展望ははるかにバラ色になるだろう。
バイデンは新型コロナウイルスのパンデミックの真っただ中で、世界的なサプライチェーンの異常な混乱が経済を襲っていた時に大統領に就任した。
コロナ禍からの回復では、米国は優に世界各国をアウトパフォームしている。