(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年7月19日付)

中国はこの動物のように可愛らしい存在ではない

 米国のジョー・バイデン氏が大統領に就任した後まもなく、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に両国の橋渡しになる提案を行ったことは、あまり印象に残っていない。

 2020年の大統領選挙期間中に、バイデン氏がロシアを地政学上のライバルと位置づける発言をすることはほとんどなかった。

 当時はもっぱら中国に関心が向かっていた。

 2021年6月にスイスのジュネーブで行われた首脳会談では、バイデン氏があの手この手でプーチン氏のご機嫌を取ろうとした。

 ロシアを大国と呼ぶことさえした。

 その数週間後、バイデン氏はアフガニスタンに最後まで残っていた米軍の部隊を引き揚げさせた。

 これが大失敗となり、バイデン大統領の時代を決定づける出来事になるかと思われた。

 今にして思えば、一見無関係な2つの出来事――バイデン氏がロシアに前向きな雰囲気でアプローチしたことと、アフガニスタンから撤退したこと――がウクライナに侵攻するプーチン氏の決意を揺るぎないものにしたことは明らかだ。

 ロシアがウクライナの併合に動いても、2014年のクリミア併合の際以上の断固たる対応を西側が取ることはなさそうだとプーチン氏は考えたのだ。