(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年7月1・2日付)

プリコジンの運命やいかに(写真は6月24日ロシア南部州都に進軍した時のもの、提供:Wagner Group/ZUMA Press/アフロ)

 文豪レフ・トルストイの傑作「アンナ・カレーニナ」の締めくくりの第8編で、小説の悲劇のヒロインの恋人、アレクセイ・ヴロンスキー伯爵が同胞のスラブ人をオスマン帝国の支配から解放するためにバルカン半島で戦う何千人ものロシア人志願兵に加わる。

「彼は我が身を犠牲にして大隊と戦っている」とある登場人物が叫ぶ。

 平和主義者のトルストイはヴロンスキーの行動を、アンナの自害の前でさえ人生の目的を見つけるのに苦労していた欠陥のある人間の衝動的な行為として描いている。

 しかし、現代の読者にとっては、150年ほど前に出版されたこの小説の最後のシーンは我々の時代にも響く心情に満ちている。

 非公式、半ば公式、または密かに国の支援を受けてロシアのために戦う戦士の長い伝統を彷彿させる。

 帝政ロシアの19世紀の義勇兵からウラジミール・プーチンの大統領時代の軍事会社ワグネルまで連綿と続く伝統だ。

プリゴジン全盛期の終わり

 創始者兼指導者のエフゲニー・プリゴジンによるロシア南部での武装蜂起があえなく終わった後、ワグネルはかつての支援者で今や激怒しているプーチンの手による再編か解体に直面している。

 プリゴジンとワグネルの工作員がロシア各地を回り、ウクライナで戦うために刑務所で受刑者を採用した日々はもう過ぎ去った。

 反乱を支持したと思しきシンパに対するプーチンの弾圧は、ワグネルをお払い箱にし、戦争の遂行努力をロシアの正規軍と治安機構の指揮下に置こうとする思惑を示唆している。

 ワグネルの活動の舞台となっているもう一つの主要地域がアフリカで、ここで事態がどう展開するかは、もっと不透明だ。