全米脚本家組合と俳優組合が63年ぶりのストに突入している(7月14日撮影、写真:Splash/アフロ)

63年ぶりの俳優、脚本家合同スト

 全米の俳優ら116、741人で作る組合、「SAG-AFTRA」(=Screen Actors Guild―American Federation of Television & Radio Artists)とメンバー1万1000人の脚本家組合(WGA=Writers Guild of America)によるストが長期化する兆しを見せている。

 両組合が共闘するのはロナルド・レーガン氏(第40代大統領)がSAG-AFTRA会長の時以来63年ぶりだ。

 相手は、ディズニー、ユニバーサル、ソニー、パラマウント、ワーナーブラザーズなどハリウッドの主要映画スタジオで構成されるAMPTP(Alliance of Motion Picture and Television Producers)という「資本家集団」だ。

 6月末に切れる契約をめぐるWGAとAMPTPの交渉が決裂、WGAが5月にストに入ったのを受けて、SAG-AFTRA も7月にストに入った。

 ストの理由は、賃金値上げ、待遇改善だけではない。

 すでに映画作りに使われ出したAI(人工知能)をどう扱うかで、「資本家」である制作会社と「労働者」である俳優や脚本家とが真っ向から対立し、ちょっとやそっとではミゾが埋まりそうにないのである。

 AIの登場以来言われてきたAIがやがて人間にとって代わり、仕事を奪ってしまうという危惧の念がハリウッドで現実のものとなってきたのだ。

 これまでのストと大きく異なるのは、労使対立の「影の主役」がAIだという点だ。

 AIが我々の生活をどう変えるのか、近未来を展望して諸説が出ている。

 AIが作物の「採り頃」判定から適正な農薬散布、収穫から出荷まで農業従事者を助けるなど、労働力不足の農業を大きく変えそうだ。

 工場では熟練工の技術を学習してものづくりに貢献する。

 売れ筋のデザインを作成する。いずれは人事評価までやってのける。