(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年7月5日付)

私たちは本能的に、投影を通じて他者を理解する。
相手が自分と同じように考えたり感じたりしていると決めてかかる、ということだ。国家もよく、外交政策で同じ過ちを犯す。
ここ2年間の中国と欧州の関係の中心には、認識のギャップがある。
中国政府で外交政策を担うエリートたちは、欧州諸国がウクライナをここまで支援するとは思っていなかったのだ。
欧州のウクライナ支援を過小評価
中国の国際関係の専門家の間では、価値観や政治文化よりも経済的な利益や国力を重視するリアリズムの傾向が支配的で、ウクライナ人は大して戦わないと想定する向きが大半だった。
予想に反してウクライナ人が戦うと、欧州諸国はきっとその費用を負担したがらないだろうとか、ロシアのエネルギーへの依存を止めたがらないだろうと考えた。
その結果、中国のエリートは、習近平国家主席とウラジーミル・プーチン大統領の「限界のない」友情が中国の外交関係に及ぼすダメージも過小評価することになった。
エリートたちはその後、ウクライナに対する欧州の支援の深さを理解するようになった。
だが、今度はそれを欧州における「イデオロギーの回帰」で説明している。
上海外国語大学(SISU)の党委員会書記、姜鋒(チャン・フォン)氏は昨年著した論文で、「今回の『再イデオロギー化』の広がり方は冷戦時代のそれよりも深刻だ」と指摘した。
そして、ウクライナの戦いが「どんな犠牲を払ってでも行う対決」になり、「ドイツは(対決しないくらいなら)自分の片腕を切り落とした方がましだと考えている」などと論じた。