(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年8月8日付)

ドナルド・トランプは自慢屋で嘘つきだ。ドナルド・トランプはクーデターを実行しようとした――。
この発言はどちらも事実だと筆者は考える。
だが、トランプが大統領として、ジョー・バイデンが後に基盤とした米国の外交政策、国内政策の歴史的転換を成し遂げたこともまた事実だ。
こうした転換は恐らく永続するだろう。たとえトランプが刑務所に送り込まれたとしても、だ。
ある大統領の時代を真に歴史的なものにする要素とは何か。
基本的に、その結果と前提が後に政敵によって受け入れられ、吸収される劇的な過去との決別が必要になる。
フランクリン・ルーズベルトはニューディール政策でこれを成し遂げた。リンドン・ジョンソンは公民権法でやった。
ロナルド・レーガンは今では一般的にネオリベラリズムと称される規制緩和、減税政策で成し遂げた。
レーガンの後に続いた歴代大統領は、彼が授けた自由市場の哲学を受け入れた。
ビル・クリントンは北米自由貿易協定(NAFTA)を成立させた。ジョージ・W・ブッシュは世界貿易機関(WTO)に中国を迎え入れた。
オバマ政権は米中の二国間投資条約の締結に向けて取り組み、環太平洋経済連携協定(TPP)に合意した。