安政年間のコレラの前に登場した「アマビエ」

 スペイン風邪の時、住職が日記をつけて後世に伝えていれば、それは貴重な記録となったはず。今回のコロナ禍の様子も、多くの寺院が記録に留めてほしいと願う。

 さらに、時代を遡って寺院の過去帳を見てみた。江戸末期の1858(安政5)年〜1859(安政6)年にはコレラが大流行している。

 安政年間のコレラは長崎で最初の感染があり、同年8月には江戸で大流行した。江戸だけで死者は28万人とも言われている。

 例えば幕末期の年平均葬式件数が30件前後の熊本県のC寺の場合、

1858(安政5)年 57件
1859(安政6)年 76件
1860(万延元)年 44件
1861(文久元)年 28件

であった。

 これもコレラが原因の増加と考えられる。私の寺の場合も、安政年間には通常の3倍ほどの葬式数に上っていた。当時はコレラに対して、防疫や医療は、ほとんど機能しなかったであろう。

 ちなみに、疫病平癒の霊力を持つ「アマビエ」が瓦版に登場したのが、1846(弘化3)年のこと。肥後国(熊本県)の海に現れて、「当年より6か年は諸国は豊作になるが、病が流行る。早々に私の写しを人に見せよ」と言い残して海中に消えたとの逸話が残る。