根拠のない話で不安を煽る大手メディア

 国際原子力機関(IAEA)も、公式の声明で、繰り返し今回の日本のALPS処理水の海洋放出には問題がないと発表しています。

 科学的根拠という点では、むしろ日本は海洋放出に対して不必要なぐらい慎重に希釈化し、わざわざ放出用パイプを這わせて沖合まで伸ばして放出しているのです。もちろん、科学的根拠はまったくありません。

 ここで使われた敷設費用の総額約120億円は、ただただ周辺住民が不安に思ったり、中国・韓国が文句を言ってきたりすることに対抗してのものと言えます。

福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の放出(IAEA)

ALPS処理水の海洋放出設備。海洋放出に対して不必要なぐらい慎重に希釈化し、わざわざ放出用パイプを這わせて沖合まで伸ばして放出している(写真:共同通信社)

 これらの問題においては、通常の生活に戻っていく福島県民の立場をあえて被害者のままにとどめ、問題があると不安を煽り続けるメディアも共犯関係にあると言えます。被災地とはいえ、もう12年も経過している以上は、福島県民もいい加減自立できるでしょうし、いつまでも「フクシマ」のままにしてはらなないと思うんですよ。

 例えば、朝日新聞はつい先月も、ALPS処理水の海洋放出に関して「科学的根拠のまったくない不安を軽視せず対話しろ」という社説を掲載しています。これは、根拠のないお気持ちを鎮めるために、予算を組んでカネを出せと言っているに等しいと思います。読みようによっては、ある種のタカリ容認の姿勢と見られても仕方がありません。

 わざわざ「政府と東電は今後も丁寧な説明を続ける必要がある」とまで書いているのは、不安だと言い続ければ政府や東京電力から資金が出て、どこか関係先のふところに流れていくからにほかならないのではないかという反論も出るでしょう

(社説)処理水の放出 不安軽視せず対話を(朝日新聞デジタル)

 朝日新聞に限らず、本来のメディアの役割は、根拠のないガセネタを流して国民の不安や不満を煽ることではなく、根拠のない不安を打ち消して「そこに問題はないのだ」と解説を重ねて、意味や価値のある方向に社会を向かわせることではないのかと思います。