2019年6月30日、板門店で米国のトランプ大統領(当時)と会談した金正恩総書記(写真:ロイター/アフロ)

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権発足後、南北関係は険悪化の一途をたどっている。韓国では「北朝鮮は主敵」という概念が5年ぶりに復活、これに対して北朝鮮からは韓国の保守政権を揺さぶるための挑発が度重なっており、朝鮮半島に緊張感が高まっている。

 そんな中、北朝鮮が国際舞台への復帰を狙って日本との対話に乗り出すのではないか、と見方も浮上している。

米国も反対しない「日朝対話」

 5月27日、日本の岸田文雄首相が日本人拉致被害者問題の解決のために「金正恩朝鮮労働党総書記と前提条件なしで会う用意がある」と言及してから2日後の29日、北朝鮮は朴相吉(パク・サンギル)外務次官を通じた談話で「会えない理由はない」と発表したことがひとつの契機になっている。

 韓国メディアは、北朝鮮側が岸田首相の発言に対して、「過去に縛られずお互いをありのまま認めるなら」という前提条件を付けながらも前向きな態度を示したことに注目している。さらに岸田首相がさらに一歩進んで「首脳会談のための高官級会談を開くことを望む」と述べたことについては、膠着状態に陥った南北関係の代わりに日朝関係が朝鮮半島情勢を主導することになるかもしれないという観測も出ている。

 公営通信社の『聯合ニュース』は、「北朝鮮と日本が対話に向けた探索を本格化した」と評価し、「ひとまず米国は日本の対北朝鮮対話に肯定的な態度を示す可能性が少なくない」と展望した。