柯文哲・台湾民衆党主席(筆者撮影)

 かつて英国のウインストン・チャーチル首相は言った。「民主主義は最悪の政治形態である。ただし、他に試みられたあらゆる形態を除けば」。1時間の記者会見の間、この言葉が時折、脳裏をよぎった。

 誰の会見かと言えば、6月8日にFCCJ(日本外国特派員協会)で行われた柯文哲(か・ぶんてつ)台湾民衆党主席のものだ。柯主席は、来年1月13日に実施される、「ポスト蔡英文(さい・えいぶん)」を決める次期総統選挙への出馬を表明している。

「次期総統候補」

 台湾では、次期総統を目指す政治家が、アメリカと日本に「顔見せ」にやって来ることが、習慣となっている。一般に台湾の政治家は、台湾の外交上、世界で一番重要なのはアメリカで、アジアで一番重要なのは日本と思っているからだ。

 柯文哲主席も、4月にアメリカを訪問し、今回6月4日~8日の日程で、日本を訪問した。自民党や立憲民主党、日本維新の党などを訪問した後、帰国前の最後の日程で、記者会見を行ったのだ。

 そこには柯主席とともに、台湾から同行して来たという「14人の記者団」も混じっていた。FCCJには彼らも含めて、約100人の記者団が集まり、ものすごい熱気である。

 そんな中、柯主席はいつものように、サッと右手を挙げると、壇上中央の席について、中国語で自己紹介した。

「次期総統候補の柯文哲です……」

 いきなり、「次期総統候補の」と強調するところに、柯主席の意地を感じた。