トヨタ自動車と独ダイムラートラックが、それぞれ傘下の日野自動車と三菱ふそうトラック・バスを統合することを決めた。2023年5月30日、都内で開かれた共同記者会見では、トヨタとダイムラートラックが商用車向けにCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングなどのサービス、電動化)技術の開発で協業すると説明。背景には、スケールメリットを追求しなければ、これまでトラック・バスに立ちはだかっていた「CASEの壁」を突き崩せないとの危機感がある。
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
三菱ふそうと日野は対等な立場で統合し、商用車の開発、調達、生産分野で協業する。グローバルに競争力のある商用車メーカーを目指す。トヨタとダイムラートラックは、三菱ふそうと日野を傘下に置く持ち株会社を2024年末までに設立し、出資比率は同じ割合とする。
ダイムラートラックは、旧ダイムラーが乗用車部門のメルセデス・ベンツグループと商用車部門に分離して誕生した企業だ。「メルセデス・ベンツ トラックス」「フレイトライナー」「三菱ふそう」など小型から大型までトラックやバスを手掛けるブランドを傘下に持つ世界最大級の商用車メーカーである。ここに、日野が加わる形となる。
トヨタ、ダイムラートラックの両トップが共に強調したのが、「社会インフラとしての商用車」の役割だ。トヨタの佐藤恒治社長は記者会見の冒頭、物流に占めるトラック輸送の割合は世界で約50%、日本で約90%に及ぶというデータを示し、いかに商用車が社会・経済を支える存在であるかを強調した。続いて登壇したダイムラートラックのマーティン・ダウムCEO(最高経営責任者)、三菱ふそうのカール・デッペンCEO、そして日野の小木曽聡CEOも同様の意義を繰り返し説明した。
それだけに、あらゆる産業で脱炭素に向けた流れが加速するなか、商用車でも対応が急務になっている。乗用車では電気自動車(EV)が急速に広がり始めている一方、トラックなどの商用車では電動化などCASEの歩みは遅れていた。