文=渡辺 慎太郎
2023年4月25日、メルセデス・ベンツの新型Eクラスがワールドプレミアされました。
発売は欧州で今年(2023年)の夏頃の予定だそうですが、事実上“従来型”となってしまった現行型が登場したのは2016年なので、7年ぶりのフルモデルチェンジです。
6~7年でのサイクルはルーティンの範囲内であり、エンジンを縦置きした後輪駆動ベースのプラットフォームを共有するSクラスとCクラスがすでにフルモデルチェンジを済ませていたので、新型Eクラスがこのタイミングでお披露目されたこともほぼ想定内となります。
テールライト、ダッシュボードの独自デザイン
メルセデスは、Cクラス、Eクラス、Sクラスのスタイリングを似たような雰囲気にするというコンセプトを掲げてきています。
彼らが言うセダンの「クラシック・プロポーション」とは、前輪からフロントバンパーまでの距離を短くした“ショートオーバーハング”、前後方向に長いボンネット、そしてキャビンをなるべく後方へ置くデザインを示しており、CクラスもSクラスもこのEクラスもそれに則っていることが分かります。
新型Eクラスのボディサイズは全長4949mm、全幅1880mm、全高1468mmで、現行型よりも約10mm長く、約30mm広く、約15mm高くなり、ホイールベースも22mm長くなっています。1900mmを軽々と超えた全幅のクルマが増えている昨今で1800mm台をどうにか死守する一方で、全高とホイールベースの延長により、室内の前後方向と天地方向の拡大は図られているようです。
メルセデスの電気自動車「EQ」モデルの一部がそうであるように、ラジエターグリルの外周にはLEDが埋め込まれて光り輝くというオプションが用意されました。ヘッドライトはLEDが標準、デジタルライトがオプションで、“スリーポインテッドスター”を模したテールライトのデザインは現時点で新型Eクラス専用です。
ダッシュボードのデザインは、SクラスやCクラスの2画面タイプと、一部のEQモデルに採用されているMBUXハイパースクリーン(ドライバーディスプレイ、センターディスプレイ、助手席用ディスプレイを1枚のディスプレイに見えるように配置したスクリーン)を融合させたような感じで、メルセデスはこれを「MBUXスーパースクリーン」と呼んでいます。
このデザインの採用について担当エンジニアは「『EQE』(筆者注:メルセデスのSUVタイプEV)との差別化を図りたかったのと同時に、MBUXハイパースクリーンの見栄えや使い勝手は共有したかった」とオンラインのインタビューで答えています。メルセデスはこれまでも、ダッシュボードのインターフェイスはモデルを問わず共通化してきましたが、MBUXスーパースクリーンが今後登場するモデルにも順次採用されるかどうかは不明です。
iPhoneやApple Watchをキーとして使えるデジタルキーは最大16人まで登録可能な他、例えば「室温が12度以下になったらシートヒーターをオンにして、アンビエントライトを暖色系のオレンジに変更」といったコマンドをあらかじめセットしておくことも可能です。よりきめ細やかな設定による快適空間や、ドライバーのルーティンを記憶することでパーソナルな仕様に仕立てることなどを、デジタルデバイスを駆使することで実現しているようです。
パワートレインはとりあえず6種類あって、その半分がプラグインハイブリッドとしている点が新型Eクラスの特徴です。
エンジンはすべて2Lの直列4気筒で、ガソリンのE200(204ps/320NM)、ディーゼルのE220d(197ps/440Nm)とE220d 4MATIC(197ps/440Nm)、プラグインハイブリッドのE300e(313ps/550Nm)、E300e 4MATIC(313ps/550Nm)、E400e 4MATIC(381ps/650Nm)となっています。ガソリンもディーゼルもISG(Integrated Starter Generator:発電機とスターターの機能を兼ねた電気モーター)仕様なので、すべて電動化ユニットで統一されているのは、最近のメルセデスの流儀でもあります。
SクラスとCクラスに挟まれたEクラス
Sクラスはフラッグシップとしての威厳と性能をより高めているし、Cクラスはボディサイズも大きくなってずいぶん立派になりました。そんな2台に挟まれた形の現行型のEクラスは、正直なところ存在感が薄くなってしまったのも事実です。
新型のエクステリアやインテリアの一部にEクラス専用の施しが見られるのは、おそらくEクラスの存在意義をあらためて強くアピールしたいという、メルセデスの偽らざる本意の現れではないかと考えています。