棋士一人一人に求められる普及活動と「発信力」

――囲碁界はいま大きな変化もあり、過渡期を迎えていると思います。将棋に比べて人気が低いとの厳しい指摘もありますが、現状と未来に向けて何か処方箋はありますか。

吉原 私たち棋士はプレイヤーでありながら、囲碁をもっと普及させる役割も担っています。人気スポーツならプレイする姿を見せるだけで人気が高まったりしますが、囲碁はルールを知らない人が見たらよくわからないものだけに、魅力を伝えていくことを怠ってはいけないと考えています。

 もちろんそう思って活動している棋士もたくさんいますが、もっともっとそれを棋士一人一人が認識して、自分にできることをみんながやっていったら囲碁界も必ず変わると思っています。

――将棋の世界では、藤井聡太六冠の活躍によって将棋人気が高まっているように、囲碁も井山本因坊、一力遼棋聖らが世界に勝ち、魅力ある碁を打つことで普及につながる気もします。

吉原 井山本因坊、一力棋聖、芝野虎丸名人らの対局は最高に面白く、常に注目を集めています。ぜひこれまでのように素晴らしい碁を見せていただき、世界戦でもご活躍いただきたいです。そのことは言うまでもなく囲碁の普及につながります。

 将棋は藤井さんの活躍が目立ちますが、人気の要因はそれだけではないと思います。たとえば、香川愛生女流四段や山口恵梨子女流二段などはSNSやYouTubeを活用して魅力を伝えています。

 囲碁界でもYouTubeに力を入れる棋士が増えてきました。私は今までSNSをまったくやっておらず、Twitterを始めたのもここ数年ですが、これからは多くの棋士が発信力を高めていく努力をしたほうがよいと考えていますし、私もできることをひとつひとつやっていこうと思っています。

 棋士自らが愛する囲碁の魅力をさまざまな形で伝えていけば、それが大きなエネルギーになるでしょう。本当に囲碁は面白いんです。奥深くさまざまな変化に富んでいて、人間らしさがにじみ出ます。知力を尽くしたタイトル戦は、ヨミの深さに震えるような感動があります。そんな囲碁の魅力が伝われば囲碁界はもっと輝くと信じています。

 今回、本因坊戦が大幅縮小になりましたが、逆に言えば危機意識はより高まったと思います。これを機に私たちができることを模索して、できることを精一杯やる。そして、プロ以外の囲碁を愛してくださっている多くの関係者やファンの方々にもご協力いただき、大きな力で盛り上げていきたいです。

 囲碁の魅力は計り知れません。最近、研究会などで、リアルタイムで対局されている碁を検討していると本当に楽しいんです。打った手から対局者の心理を想像したり、AIの示す想像を絶する手に感動したり。「囲碁が趣味だったら最高だね」とよく棋士同士で話しています。