米グーグルは2022年、人工知能(AI)分野のサービス開発で、かつての米イーストマン・コダックのようなイノベーションのジレンマに陥ったと、米CNBCが報じている。
生成AIでMSに先行される
英グローバルデータのストラテジスト、サイラス・ミワワラ氏は、「生成AIの分野では米オープンAIに出資する米マイクロソフト(MS)がグーグルに先行している」と指摘する。
マイクロソフトは23年2月、オープンAIの対話AI「ChatGPT」を検索エンジン「Bing(ビング)」に組み込んだ。オープンAIは23年3月に大規模言語モデルの最新版「GPT-4」を発表したが、マイクロソフトはさっそくBingにGPT-4を取り入れた。加えて、業務用ソフト群「マイクロソフト365」にGPT-4をベースにした対話AI「Copilot(コパイロット)」を搭載すると発表した。同社は自社の事業全般においてAIを取り入れる意向を示している。
一方のグーグルは過去何年もAIに投資してきた。同社は14年に英国のAI開発会社DeepMind(ディープマインド)を約5億ドル(当時の為替レートで約515億円)で買収した。先ごろはこのディープマインドとグーグルのAIチーム、Brain(ブレイン)を統合し、研究開発に経営資源を集中させると明らかにした。
しかし、ミワワラ氏は「こうした取り組みはずっと前に行われるべきだった」と指摘する。グーグルは素晴しいAI技術を持っているにもかかわらず、マイクロソフトに遅れを取った。それは、グーグルがいわゆる『コダックモーメント』のような状況に陥っていたからだという。
イーストマン・コダックは世界で初めてデジタルカメラを開発した。だが写真フィルム事業に固執した同社はデジタル革命に取り残され、12年に経営破綻した。
「グーグルは優れたAI技術を持つが、それが中核事業のインターネット検索を脅かすと同社は考えた。カニバリゼーション(共食い)を引き起こすかもしれないと考えたのだ。結果、同社のAI技術は一般向けサービスとして提供されることはなかった」とミワワラ氏は指摘している。