ウクライナ戦争への米国の支援でも軍需産業が武器を販売する(写真:AP/アフロ)

ロシアによるウクライナ侵攻以降、世界の株式市場では防衛関連企業に投資マネーが流入した。ロッキード・マーチンの株価が2022年12月に過去最高値をつけるなど、とりわけ米国の大手企業が注目されている。古来、「戦争は儲かる」とされてきたが、「軍産複合体」との言葉もある米国では、いつから、どのように、軍需産業の影響力が強まったのだろうか。

(宇山 卓栄:著作家)

ソ連と並ぶ敵は自国の労働者

 第2次世界大戦が終わる1945年から1953年までの米トルーマン政権下で、政府参謀として力を持ち、労使交渉の問題などで強硬な内容の提言をしていたチャールズ・エドワード・ウィルソンという人物がいました。ゼネラルエレクトリック(GE)社のCEO(最高経営責任者)も務めていた人です。

 戦争が終わったばかりの1946年、彼は次のように述べています。

「今日、アメリカが直面している課題は、外敵としてのソ連、そして内敵としての労働者、これら2つの敵をどのように制圧するかだ」

 ウィルソンは、アメリカには永遠に続く戦争が必要だとの考えを持っていたと言われています。彼の言う「外敵」と「内敵」の両方を封じ込める方法は唯一、軍事予算を大幅に拡大することでした。

 外敵がソ連であることはすぐにわかりますが、労働者が内敵だというのはどういうことでしょうか。説明しましょう。