暗殺はお茶で

 例えば、2020年には反政権活動家であるアレクセイ・ナバリヌイ氏が飛行機の中で意識を失って重体に。入院先のロシアの病院では毒物は検出されなかったが、危険を感じたナバリヌイ氏の側近がドイツに転院させて検査し直したところ、神経系の成分が検出された。体調が悪化する前に飲んだお茶に毒を盛られたとの見方が支配的だ。

 少し時代を遡れば、2004年にはノーバヤ・ガゼータ紙のアンナ・ポリトコフスカヤ記者が紅茶を飲んで意識不明の重体になり、奇跡的に回復するも2006年に射殺体で発見されている。

 同じ2006年には元スパイのアレクサンドル・リトビネンコ氏が亡命先のロンドンで殺害されたが、体調を崩す前にホテルのバーで飲んだ緑茶からは猛毒の放射性物質が発見されている。

 彼らに共通するのは、反政権。ポリトコフスカヤ氏は政権のチェチェンでの行為を批判していたし、リトビネンコ氏はチェチェン武装勢力によるモスクワのアパート爆破をプーチンの自作自演と発言していた。もちろん、真偽は不明であり、彼らの死の真相は藪の中だが、プーチン氏の周辺は「酒」ではなく、「お茶」がキーワードであることは間違いない。

 とはいえ、「酒」の話題もある。プーチン政権下では、国内のアルコールの消費量が大きく変化している。

 世界保健機関(WHO)は一日、ロシアの一人当たりアルコール消費量(2016年)が03年に比べ43%減少したという報告書を公表した。酒類の販売制限や健康な生活習慣の促進など、スポーツ好きのプーチン大統領の下で進められた施策が奏功したと分析している。

 報告書によると、密造酒の消費量が激減した。こうした傾向を背景に平均寿命が伸びており、18年は女性で78歳、男性で68歳に達した。1990年代初めの男性の平均寿命は57歳だった。