極端な脱炭素がエネルギー危機を悪化させた

 なお悪いことに、G7は開発途上国の化石燃料事業への投融資を止めたことを誇り、今後もさらに継続する意思を確認した。気候・エネルギー・環境大臣会合のコミュニケにはこうある。

“74. 国際的な化石燃料ファイナンス:我々は、(中略)地球環境に関する1.5℃目標やパリ協定の目標に整合的である限られた状況以外において、排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援を2022年までに終了したことを強調する”

 ここ数年、G7と、その圧力を受けた世界銀行などの国際開発機関が主導して、化石燃料事業を悪者扱いし、世界的な規模で投資・融資を止めてきた。これが大きな要因となって、今回のエネルギー危機が悪化したことを、途上国はもちろん骨身に沁みて知っている。

 途上国はこれまでは化石燃料事業を止めるようにさんざん言われてきて、国際開発機関からの融資も受けられなくなってしまった。ところがエネルギー危機勃発で、欧州も米国も化石燃料の調達に奔走し、途上国を助けるどころかかえって問題を悪化させたのだ。欧米の二枚舌ぶりはひどかった。

 現在のG7首脳は、米国、カナダ、ドイツ、フランス、英国のいずれも脱炭素に熱心だった政権で、いまでもその旗を降ろしていない。だがこれらの国こそ、極端な脱炭素を推進した結果、世界のエネルギー危機を引き起こした張本人だ、と途上国は認識しているだろう。

 どうやら政府の無謬性というのは、日本だけの特徴ではないらしい。