(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
韓国ギャラップの世論調査によれば、尹大統領への支持率は元朝鮮半島出身労働者(徴用工)問題解決案を明らかにして以来、下降気味であった。さらに、韓国国民は訪日の際、尹大統領が一方的に譲歩し、日本からの見返りが少なかったのではないかと不満を抱いており、尹大統領の支持層である保守系さえも訪日を評価することに躊躇するようになった。
そうした中でも尹政権としては、米国を国賓訪問して大歓迎を受け、4月26日の首脳会談で成果を見せれば、韓国国民の尹外交への信頼と支持を取り戻せるだろうと期待しているに違いない。
予定外の米国政府機密文書の流出
そこに起きたのが米国政府の機密文書の流出である。そこには米国の諜報機関が、同盟国である韓国の大統領室に対し諜報活動を行っていたことが示されていた。暴露された文書には、韓国大統領室の国家安保室長と外交秘書官が米国政府の圧力を懸念して、ウクライナへの殺傷武器支援を不可とする原則をかいくぐり、ひそかに供与する策を検討していたことが記されている。
それでも韓国政府は、「米国に悪意がなかった、情報には虚偽のものが多く含まれている、今後米国政府は調査結果を韓国とシェアするだろう」として、この問題の幕引きを図っているようである。だが同盟国に対して盗聴・通信傍受を仕掛けていた米国に対してまともに文句も言えない弱腰外交に対して、野党「共に民主党」やメディアは批判を強めている。
韓国ギャラップが4月14日に発表した世論調査で尹大統領の支持率が5カ月ぶりに27%と30%を割り込んだ背景には、そうした雰囲気があった。