印初のアップル直営店オープン(写真:ロイター/アフロ)

 米アップルは4月18日、同社初のインド直営店をオープンした。場所は商都ムンバイの商業地区バンドラ・クルラ・コンプレックス(BKC)にあるショッピングモール「リライアンス・ジオ・ワールド・ドライブ」内。店舗名は「Apple BKC」だ。

 続いて、4月20日には首都ニューデリーで2号店をオープンする。こちらは商業施設「セレクト・シティーウォーク」内で店舗名は「Apple Saket」。いずれも高級ショッピングモールである。

初の直営店でブランド発信

 インドではこれまで、地場小売業者との提携によるフランチャイズ方式のアップル専門店やオンライン販売はあった。だが、直営の実店舗は小売り分野の規制が障壁となり、実現していなかった。アップルは今後これら実店舗を通して自らブランドを訴求していく。

 ロイター通信などによると、ティム・クックCEO(最高経営責任者)は開店に合わせてインドを訪れ、モディ首相やチャンドラセカール電子情報技術担当相と会談する。

インド売上高、過去最高に

 こうした動きは、アップルがインドを重視していることを示している。米ブルームバーグによると、2023年3月までの1年間におけるアップルのインド売上高は、約60億米ドル(約8100億円)となり、過去最高を更新した。前年の41億ドル(約5500億円)から約50%増加した。

 世界的に電子機器の需要が減速する中、アップルはインドで増える中間層を有望な顧客とみており、同国で販売拡大を図っている。米調査会社のIDCによると、アップルの売上高は通常、iPhoneやウエアラブル機器にけん引されるが、過去2年は企業向けパソコンも好調だった。新型コロナ下でリモートワークが増えたからだという。

 インドは中国に次ぐ世界第2位の携帯電話市場であり、スマートフォン所有者は約7億人いる。だが、iPhone所有者はそのうち4%にすぎない。インド市場では地場メーカーの安価なブランドや中国、韓国のメーカーが強いからだ。その一方で、価格が365ドル(約5万円)と比較的高価な端末の市場でアップルは首位に立つと香港の調査会社カウンターポイントリサーチは指摘する。

インド生産拡大で輸出も増加

 アップルのインドにおける売上高は、同社全売上高の数パーセントにすぎない。だが、同社にとってインドは製造国としての重要性も増している。

 アップルとその主要サプライヤー企業は、米中貿易摩擦による事業リスクを回避するべく、中国からの生産移管を進めている。アップルは17年に電子機器受託製造サービス(EMS)大手の台湾・緯創資通(ウィストロン)と提携しインドでiPhoneの生産を始めた。その後、同じくEMS大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業や台湾・和碩聯合科技(ペガトロン)がインド生産を開始。最近は、和碩聯合科技が同国で2つ目の工場開設を計画しているとも報じられた。

 業界団体のインド携帯電話・電子機器協会(India Cellular and Electronics Association、ICEA)によれば、22年4月から23年2月までに約90億米ドル(約1兆2100億円)相当のスマートフォンがインドから輸出された。そのうち50%以上をiPhoneが占めている。