米アップルのインドに対する見方に変化が生じてきたと、米ウォール・ストリート・ジャーナルが4月10日に報じた。かつては、巨大な影響力を持つ中国サプライチェーン(供給網)との均衡を保つための手段と捉えていたが、今は新たな販路の中心拠点として見るようになった。そして、アップルのインド戦略は生産と販売の2つが連動してうまく機能しているという。
インド初の直営店、西部ムンバイに
ロイター通信などによると、アップルは2023年4月6日、同社としてインド初となる直営店の外観を公開した。アップルによると、この直営店の場所は西部ムンバイで、23年4月18日にオープンするという。
アップルはこれまでインドで地場小売業者と提携し「Apple Premium Resellers」というフランチャイズ方式でアップル専門店を展開したり、ネット通販大手フリップカートなどを通じて製品をネット販売したりしてきた。
インドではApple Storeのようなメーカー直営店は、「シングルブランド・リテール」と分類される。その外資比率が51%を超える場合、金額ベースで約30%の製品・部品をインド国内企業から調達しなければならない。これが、いわゆる「30%調達ルール」だ。だが、アップル製品は大半が中国で製造され、部品も中国などのインド国外で作られていたため、この要件を満たせなかった。
しかし、英フィナンシャル・タイムズによると、インドではここ数年規制が緩和された。アップルは20年9月に同社としてインド初の直営オンラインストアを開設した。加えて、近年は電子機器受託製造サービス(EMS)大手との協力でインド生産を拡大している。17年には、台湾のEMS大手、緯創資通(ウィストロン)と提携し、インドで「iPhone」の型落ちモデルの組み立て業務を開始した。20年には同じく台湾EMS大手の鴻海(ホンハイ)精密工業が当時の現行モデルを手がけ、インド生産を本格化させた。
こうした経緯があり、アップルはインド直営店をオープンできることになった。ウォール・ストリート・ジャーナルは、実店舗の開設でアップルは販路を一段と拡大するだろうと報じている。