(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格は1バレル=80ドル台で推移している。今年(2023年)1月下旬以来、約2カ月ぶりの高値水準だ。
OPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成)の加盟国が4月2日に「5月から年末まで追加減産を行う」と発表したことが上昇の起爆剤となった。
不意打ちだった自主的減産
サウジアラビアが「日量50万バレルの原油を自主的に減産する」と発表すると、他のOPEC諸国も追随した。ロイターによれば、イラクは21万バレル、アラブ首長国連邦(UAE)は14万バレル、クウエートは13万バレル減産する。トータルの減産量は116万バレルに達する見込みであり、規模は世界の原油供給量の1%分に相当する。
市場は「OPECプラスは昨年11月実施している日量200万バレルの減産を維持する」と当然視していたため、今回の決定はまさにサプライズだった。OPEC当局者の間からも「完全に不意打ちを食らった」との嘆き節が聞こえてくる(4月4日付ブルームバーグ)。減産の仕方も異例だ。OPECプラス全体で減産枠を決めたわけではなく、各加盟国の自主的減産という形をとっている。