(英エコノミスト誌 2023年2月11日号)
中国の経済活動再開は世界経済の成長を加速させる。不安を覚えるほどかもしれない。
中国が先日迎えた春節(旧正月)の連休に、河南省にある広大な太昊伏羲陵(たいこうふっきりょう)に観光客が押し寄せた。
英雄の戦士に濡れ衣を着せたことで悪名高い南宋の政治家、秦檜(しんかい)の像を面白がって手のひらで叩く人が大勢いた。
勢い余って高炉の蓋で像を叩く人まで現れた。
先日公開され、連休中に興行ランキングで首位に躍り出た映画「満江紅」に秦檜の悪行が描かれていることから、感情が高ぶっている。
この映画鑑賞、観光、そして像叩きに見られる熱の入り方は、世界第2位の経済大国で消費活動が驚くほど急速に回復しつつあることの証拠だ。
太昊伏羲陵によれば、連休中の入場者数は30万人に達し、過去3年間では最高の人出だった。
映画興行収入は昨年より良かっただけでなく、新型コロナウイルス発生の前年の実績をも上回った。
つい最近までマス・スクリーニング(集団検診)を強いられていた中国国民が、今では映画館のスクリーンの前に殺到している。
ゼロコロナ解除後の猛烈な感染
消費の回復が予想より早く訪れたのは、ウイルスが予想以上に速く広まったからだ。
中国がゼロコロナ政策を慌てて解除して以来、感染症は目を見張るスピードで通り過ぎていったようだ。
国の疫学者らの推計では、人口の少なくとも80%がすでに感染した。公式統計によれば、病院の入院患者数は1月5日にピークを越えた。
連休の大移動によって都市部から農村部に病気が広がるため春節後に第2波が到来すると予想されていた。だが、ウイルスは帰省ラッシュに先んじた。
ライフサイエンス系データ会社のエアフィニティは、ひどく恐れられていた第2波は第1波と融合したようだと見ている。
新型コロナ感染による死者の数は分からないものの、経済への影響は明らかになってきている。
人々がウイルスに感染して回復するとともに、中国のサービス経済が息を吹き返しつつある。