米国が「漁夫の利」を得る可能性も
それに原油価格の上昇で最も利を得るのは、ロシアと敵対する米国になるかもしれない。そもそも、米国を代表する原油価格であるWTIは、ブレントに比べてバレル当たり5米ドル程度は安い。OPECプラスが減産に努め、原油高が促されれば、競争力がある米国産の原油の輸出が増えていくシナリオも十分に考えられる。
米国としてはまさに「漁夫の利」だが、こうした事態をサウジなど産油国が受け入れることができるだろうか。産油国とすれば、原油価格の上昇で一時的に収入が増えても米国に市場を奪われるリスクもある。さらに、既に述べたことだが、価格の高騰は省エネを促すため、将来的な需要の減退につながるリスクもはらむ。
いずれにせよ、OPECプラスのサプライズは、原油価格の下支え以上の意味を持つものではないだろう。今回の協調減産を受けて上昇した原油価格だが、依然として需給は緩んでいるため、これ以上の材料がないとするならば、ブレント原油で80米ドルプラスマイナス10米ドル程度のレンジで、当面は前後して推移するのではないだろうか。
※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です