サウジとロシアが接近する背景
もともと、サウジとロシアの関係はそれほど良好ではなかった。ロシアはサウジが敵対しているイランと関係が近く、またシリアをめぐってもサウジと敵対していた。しかし、2017年にサウジのサルマン国王がロシアのプーチン大統領を訪問したことで関係改善が進み、両国は接近するようになった。
敵対してきたサウジとシリアが外交関係を再開するに当たり、その仲介役を務めてきたのもロシアである。
ウクライナへの軍事侵攻で欧米日との関係が事実上、破たんしたロシアであるが、中東諸国との間では関係を深めている。むしろ、欧米との関係が破たんしたがゆえに、ロシアは中東との関係の一段の深化を急いでいる側面もあるだろう。
原油価格の動向を巡っても、両国は密接に連絡を取っているようだ。
1月30日には、プーチン大統領がサウジのムハンマド皇太子と電話会談を実施した。3月16日には、ロシアのノバク副首相とサウジのアブドルアジズ・エネルギー相がサウジの首都リヤドで会談を行った。いずれも原油価格の動向に関する話し合いだったと伝えられている。
とはいえ、今回のOPECプラスでの追加減産の決定が下された主な理由は、足元の原油価格の水準に産油国が満足していないことにある。OPECプラスは経済的な理由から減産で合意に達したのであり、その実質的な取りまとめ役であるサウジが、ロシアを財政面でサポートしようとする政治的な意図から実施したものとは、まず考えにくい。
米国と距離を置くサウジだが、その関係を軽視しているわけではない。仮にロシアに対して何らかのサポートを行ったと認定されれば、米国とサウジの関係は一段と冷え込む。こうした展開を、当のサウジ自身が望んでいるわけでもないだろう。サウジはサウジで冷静に、対ロ関係と対米関係のバランスを取ろうとしているはずだ。